◇ 140ssネタメモ放り込み倉庫 ◇








『白い夢』

白昼夢という言葉がある。
夢というのは本来、夜見なくてはならないのだ。
光のあるところで見る夢は、現実とリンクして、やがて君を捕らえてしまうだろう。
君を夢から助けに来たよ。
俺は、夢の修繕屋。君の現実を縛る、白い夢を補修してあげるよ。



『白い手紙』

遠い未来から、真っ白な手紙が届いた。
宇宙の片隅に、凍りついた惑星がある。人類はそこに避難したよ。
このメッセージは届くのかな。
文字を書くための手は、透明になって消えてしまった。



『白い着物』

「いつまでそんなところに隠れている。私をよく見ろ」
しかしそうは言っても、目の前の女性は、血の通った人間だとは思えなかった。
雪のような肌の白さに加えて、常人離れした美貌のためかもしれない。

川から上がって水の雫を滴らせながら、岸に立つ。首筋に張り付く髪を指先で梳いている。
濡れた白い着物が透けて、体の曲線があらわになっている。
「お前は向こう岸の集落から来た者だな。死人を生き返らせる術なんて、あんなものはまがい物だ」



『赤い目』
パティシエが楽しそうにケーキを作ってるんだよ。
魔法みたいに綺麗にクリームで飾ってさ、最後に、真っ赤な苺を乗せるんだ。ルビーみたいなやつ。
でもね、あれってて本当は、怪物の目玉なんだ。苺を飾ってるときのアイツの顔、口が裂けてて、本性わかるよ。
あれは悪魔の赤い目玉。



#140ss
店頭には、色とりどりの硝子の瓶が並んでいる。
「違うんだ、これじゃないんだ…」
彼は長いこと熱心に、棚の上のものを眺めていたが、力尽きたように落胆の溜息を零す。
「貴方の思い出が入っているなんて、それは夢でも見たのよ」
「借金のかたに、記憶商人に売ってしまったんだ」



大人の女が好きだって言ったじゃない。
本当は得意じゃないお化粧だって、貴方の前では頑張ってたのに。
鏡の前に散らばる、片方だけのピアス、口紅、銀のリング。
ルビーのネックレスを首元にあてて、やっぱり付けずにしまいこむ。紅色がまるで血の涙みたいで。
#140ss



桜が散るのは仕方ないよね。たとえば、花火が終わるのもそうだし、流れ星があまりにも一瞬なのもそうだよね。
ねぇ、だったらどうして会いにきたのって?諦めることを楽しむためかもしれないね。
さよならする前に、最後に一度、君の指先にキスをするよ。
仕方ないよね。好きだったんだ。
#140ss



蒼い閃光が漆黒の夜を貫く。
無事に旅立ったか。僕は安堵の息をつく。
あれは、僕らの子孫に贈るタイムカプセル。
消えゆく地球に代わり、未来を託した九つの銀河へ。
無数の星が煌く夜空。この中に、引き継がれる希望があることを願う。
僕達の60億年の続きをよろしく。 #140ss




#twnovel妖都
ひたひた。ひたひた。
背後から足音がついてくる。
もう少しなのに。
曲がり角を曲がれば、違う世界に行ける。
けど、たどり着く前に、魔物に喰われてしまうんだって。
追いかけてきた誰かが、私の肩を掴む。
「あなたは何から逃げてるの?」
それは私自身の姿だった。




「呪いを解くためなんて、そんなの嘘だよね」
平和になった王国で、君は時々、僕のことをやけに責めるんだ。
「嘘じゃない、愛してるよ」
「もし私じゃなくても、キスしてた?」
手の中の林檎を、ぽんと宙に放り投げる。
ああ君は。
本当は、ずっと夢を見ていたかったんだね。 #140ss




#twnovel
時計の針が狂ってしまったみたいなの。
23時を示したまま、いつまでも短針が動かない。
そういえば、床にワインをこぼしてしまったみたいね。こんなに赤く濡れてしまって。
あら、落ちているのはナイフかしら。
カチリカチリ。歯車の泣く声。
もしかして・・・私の時間は。



手の中に五枚の金貨がある。
これで、秋を買いに行こう。
山を染めるための絵筆をください。
歩いていくと観覧車があった。
これで、鱗雲を捕まえにいこう。
金貨を一枚、二枚、三枚。
いつのまにか、金色の蝶になっていた。
高いところから投げてみよう。
#140ss



僕はね、灯籠売りだ。明かりがほしいのなら、君にあった灯籠をあげよう。
道を歩いて行きたいのなら。
何か思い出を振り返りたいなら。
綺麗な影絵を君に渡そう。
お代?
ほんの少し、君の灯火を分けてくれたら。
僕の灯籠は、空っぽなんだ。
明かりをつけてほしいんだ
#140ss




小人が花瓶の中に閉じ込められていた。
底が広く、口の部分は狭い細長い花瓶。
入口が狭くて、明かりが無くて暗いなぁ。
ねぇ。この瓶の中に、薔薇の花びらを散らして欲しいな。
ほんの少し甘いお水をくれたら、綺麗な花が咲くように、僕は茎を抱いてるよ。 #140ss







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