3/1 「萌黄」

#365日ss
萌黄色の巻物が、くるくると器用に手の中で回っている。
「卒業試験に失敗したって?」
兄弟子である彼が、クククッと意地悪く笑っていた。
「仕方ねーじゃん!春を早めろなんて、高位仙人でも難解なことを!」
「ところでこの巻物何だと思う」
「え」

これは大事な秘術だ。


3/2「木の芽」



3/3「桃の花」


#365日ss
はらはら。
美しい薄紅の花びら。

「誰だよ、俺を待ち伏せしてんのは」

帰り道の街角。
時折感じる、見張られてるような視線と、甘い香り。
くすくすと、子供が笑う声。

「妾に気づくとは、さすが仙人の血を引くお方様」

髪を結った童女。
掛軸の絵そっくりだ。




3/4「甘酒」

#365日ss
「じーさん、これ、万病の薬。これ飲むと、仙人みたいに長生するんだってよ」
差し出された湯のみから、熱い湯気が上がる。
「こりゃどうも」

横で見ていた囲碁仲間がにやにやしている。
孫が小さいときこう言って、甘酒を飲ませていたわけで。

好物は長生きの薬と呼んでくれ。

3/5「蕾」

#365日ss
とくん とくん とくん
脈打つ鼓動のような音が聴こえる。水が溢れ出る音にも似ていた。
心地良い、子守唄。
百年前に枯れたという木がある。
その木の枝に小さな蕾があり、ずっと蕾だけは生きていた。
月日は流れ、蕾は少しずつ膨らんでいる。
仙女が生まれる蕾なのだ。

3/6「天使の梯子」







2/15「苦いチョコレート」

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