5/1 「郭公
#365日ss

「鳴かぬなら」
占い師は下の句を要求する。
鳥の形の機械人形。
さぁ、迂闊な発言はできないぞ。
歴史上の偉人の多くが、この鳥の形の機械に運勢を任せ、滅んだりあるいは成功したのだという。
鳥の占い師は途端飛び去った。
ああ、実はあれ、幸せの青い鳥だったんだ。

5/2「青空」

#365日ss
天の鋏の二枚の刃が、規則正しく働き、青い端切れを散らかしていた。
何をしているの?
風の妖精が問う。
これはね、空の色を繋ぎ合わせているんだよ。
大小さまざまに切り離された、青一色の断片。
良い色だねぇ。一枚頂戴。ハンカチを作ろう。
季節はもうすぐ、春から夏へ。


5/3「休日」

#365日ss
※世界は毎日休日です。

赤い日付は何だろう。
ああそれは「当たり」の休日。
それは、大切な人と会ってもいい日。
他の普通の休日は、一人でゆっくり過ごすんだよ。
休日なのに人と会うの?変なの。
本当だね。
人と会うのはきっと楽しいよ。
何でもない日、万歳。


5/4「旅行」

#365日ss
この小瓶を肌身離さず、どこへ行くにも持ち歩いてね。
君は透明な硝子の瓶を渡した。
僕はその後、海を見たり山を見たり、いろんな所へ出かけた。
硝子越しに景色を見ると、瓶の中に景色が映る。
おかえり。
出迎えた彼女は、硝子瓶越しに僕を見ていた。
いい景色だったね。

5/5「魚」

#365日ss
透明な魚が泳いでいる。空の中の雲の隙間に。
あれを捕まえたくて。
手を伸ばすと、空一面に波紋が広がる。
揺れる、目の前の世界。
僕から逃げて行く。
キラリキラリと鱗を散らして。
僕は小さく息を吐く。気泡になって空に浮かぶ。
君は上手に呼吸できてるかなぁ。透明な魚。


5/6「川」

#365日ss
旅人が川を下っている。
ちょっと落し物を探しているのです。
この川を流れて、川の小石と一緒に底の浅いところへたどりついているかもしれません。
旅人は川に沿って歩く。
銀貨を一枚、拾い上げた。
それを見つめて再び川に放る。
僕の行きたい場所は君が決めておくれ。

5/30「雫」

#365日ss
地面をよく見ると、涙の形をした小さな石が沢山転がっている。
掌に載せて眺めると、それはほんの少し青くて透き通っていたり、濁った色で渦巻く模様があったりする。
これは、人が「悲しい」と感じたときに零れる雫。
私達が歩く足の下は、無数の人の悲しみの化石で出来ている。



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