8/14「人狼」
#365日ss
嘘つきはだぁれだ。村人達は尋ねました。お前は狼か?いいえ違います。私は人間です。
私は正直でありたかった。人狼は嘘つきだって言われるから。
狼が来たぞ。羊飼いの少年が騒いでいた。
実は私は、私は本当は…。
彼女は人間だよ。
嘘つき少年がぺろりと私に舌を見せた。
8/15 「吸血鬼」
#365日ss

キスしたいなぁって思っただけなんだよ。君の紅い唇が、薔薇の花みたいで魅惑的だからさぁ。
さよなら、僕の愛しい人。
僕の口づけは君を壊してしまうから。
生まれ変わったら、陽の光の下で会えたらいいな。

8/16「ドワーフ」

#365日ss
宝石を探そう。地を掘って暮らす妖精は、美しい光に憧れた。石を砕き、岩を砕き、陽の光よりもなお輝く石を探すのだ。小さな種族の彼らは、美しいものに憧れた。
やっと出会った美しい姫に、妖精は宝石を渡そうとする。だから宝石を探すのだ。王子と結ばれる物語だと知っていても。

8/17「化け猫」

#365日ss
燈籠の中に、小さな猫の影絵が見える。まるで廻り燈籠のようにくるくるよく動く。この灯の中には化猫が住んでいるんだよ。
可愛くて、ずっと飼い続けているのよ。紅い着物の女が、楽しげに燈籠を眺めて微笑む。畳の上に映るその影には、おやおや、二つの耳と長い尾の形が。

8/18「龍」
#365日ss
大雨が降る日には、空から龍が落ちてくる。
龍を見つけたら、水槽に閉じ込めて飼いならす水の龍は、真夏に一匹部屋に置いておくと、随分部屋が涼しくなるんだって。
ところが、今年の夏は雨ばかり。冷夏のようだ。
水槽の中の龍がめそめそ泣いている。今年の龍は半人前ばかりかな。
8/19「浴衣」
#365日ss
妖狐が現れて、浴衣を着てみたいとねだる。人間の娘が夏の夜、綺麗な帯を着けているのが羨ましいって。
牡丹の柄の、藍色の浴衣を用意してあげたら、殊の外喜んだ。
今度は花火が見に行きたいとねだる。庭で手持ち花火をさせてあげた。
あれから毎年、うちの庭には、牡丹が咲く。
8/20「花火」
#365日ss

浴衣を着てみたかった。夜空に大輪の花が咲く。あれを見に、人間の娘が綺麗な布の衣で着飾り、でかけているのだ。
夏の夜の藍色の空に散る、色鮮やかな花に見とれてみたい。
人間の男にねだってみたら、もっといいものがあるよと、一輪花のような花火を渡された。


#365日ss
これはこれで面白いし、火花が輝くのが美しい。
夢中になって眺めていたら、男は、子供のように微笑んで花火を見ている。
舞い落ちる儚い火の粉に、照らし出される横顔。

ねぇ、本当は。誰かに。
もしかしたら、偶然出会った貴方様に。
この浴衣の花に見とれてほしいなんて。


8/21「幽霊」
#365日ss
図書室に幽霊が出るんだって。夜な夜な白い影が現れて、本がおかしな場所に移動している。ページの間には栞が。まだ読みたい本があって、あの世に行けないみたい。

時折本棚の影から、呻くような声が。
「読書感想文が、終わらないのぉぉお…」
ああ、早く成仏してください。
8/22「スイカ」
#365日ss
スイカ、冷蔵庫に入りきれないからさ。ベタな誘い方だったと思う。
短い青春に対して、夏休みは長すぎて、なんとか会う時間を作ろうとしてさ。
まな板の上の丸いスイカ。
彼女は、力一杯スイカを叩き割ってくれた。
意外と非力なのね。はいどうぞ。
って、違う、そうじゃない。

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