【 broken beat - silvia - 0 】







あの場所に“音”を残してきた。
もう一度拾いに行かなければ。


時間が止まった世界の片隅。
カラカラと。
グラスの中で氷が崩れた。
耳にした音色に・・・・かすかに心に引っかかるものを覚えた。
もう一度揺らしてみる。
中の液体の琥珀色が、透明なグラスを透かして指に色を映す。



視(み)えるのは、閃く紅い炎。まるで蛇の舌のような。
これは誰の怒りだろう。



マドラー代わりのティースプーンの先に、氷の欠片を救い上げる。
アルコールの雫を滴らせた、冷たい塊。
目を閉じて耳をすませた。
いいや、聴くのは耳じゃない。
心を静かに研ぎ澄ませる。
燃えている。
何か紅いものが。
そして再び目を開く。
すると、じっと見つめている目の前で、氷の塊だったはずのものから。
ぼっと紅蓮の花が咲く。



(ああ・・・これは、まずいな・・・・・・)



流れ始める不協和音。




「何か、聴こえたか?」



隣で煙草をくわえていた男が、皮肉げな笑みを口元に浮かべていた。
黒衣の魔法使い。
世界が軋む音を聴く者。
そう、俺自身も・・・・・・。


溶ける暗闇の中で浮かび上がる一説の詞。
彼が描く抒情詩は、これから歩む運命を暗示する。




「だから言っただろう? ラック。他人にあまり深く関わるなって」

「言ってねぇだろ」

「さぁねぇ。で、どうする?」




一度捕らえてしまった、紅い炎の色が目から消えない。
小さく舌打ちする。


仕方がない。
迎えにいこうか。




勢いづいて廻りはじめた、外れた歯車の回収に。

















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(2011/12/7)
更新メモ用に日付入れることにしたあとがき。
これ、ブログに更新したのが2010/10くらいで、きっと書いたの1年半くらい前では・・・。
続き書きたかったよシルビア。

















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