少女は、手に写真を持って歩いていた。
「この景色を探しているんです」道を歩いていて出会った旅人に、一葉の写真を見せた。
写真は、真っ白だった。眺めながら、首を傾げた。
「何も写ってないじゃないか」
「そうですか…」
少女は悲しげに表情を曇らせて、真白い写真を受け取った。
あまりにも傷ついた顔をするので、旅人は、無性に後ろめたさを感じて、去っていこうとする少女の背中に呼びかけた。
「貴方には、どんな景色が見えているんだ」
振り返った少女が、瞳を瞬かせて、にこりと微笑んだ。
「私はそれを探しているんです。これは、私がこれから出会う物語の挿絵なんです」
だから、こうして出会ったあなたに、何が見えたか聞きたかったのですが。
やがて歩き去った少女を見送って、旅人は立ち止まったまま、目を閉じた。
真白い写真には何が写っていただろう。
花。空の色。長く続く道。誰もいない建物。
彼女は、たどりつくことができただろうか。








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