『赤と黒の遊戯 』


お題:理想的な王 制限時間:15分 文字数:457字

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「クラブとスペード、もしもこの戦争を止めたいと思うのならば、貴方達の杖を私に預けなさい。そう、貴方達もだ、ハート、そしてダイヤ」

仮面をつけた審判が、手を差し伸べて、そして恭しく一礼した。
小さな赤と黒の騎士達が、立ち向かう相手を失って騒然とした。

「貴方は誰なのだ、隠されていたJOKERなのか」
「これは失敬、私めは、王に遣わされた審判であります。この勝負を中断することをお伝えに参りました」

審判を名乗る道化師は、こんな物語を語り始めた。
この緑色の平野は、とある貴族が退屈しのぎに作り上げた、架空の庭なのであると。

来る日も来る日も、退屈な時間を持て余した、王と妃、そして貴族達は、こんな遊びを考え出した。
13の駒を見立てた、四の王を競う遊戯である。

王は、薄っぺらい紙の上の駒を並べて、葡萄酒の杯を傾けながら。
この小さくて平坦な箱庭の中で行われている戦争を眺めて楽しんでいた。


だけどあるとき、実際の戦争が起こって、遊戯どころではなくなってしまったのだ。


勝負はお預けになった。






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2014/1/24


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