『もしかして兄』



「兄さんっ!! もしかしてあなたは、僕の兄さんなんだね!!」
道を歩いてると、唐突に呼び止められた。
一体なんのことだ。
見ると、ぼろぼろの身なりをした少年が立っていた。
彼は、生き別れの兄を探している途中のだという。

「いや・・・俺は君の兄さんなんかじゃないよ」
そういうと、彼はがっかりした様子で肩を落とした。
とぼとぼと立ち去る背中を眺めて見送った。
と、そこで彼が、何か紙切れのようなものを落としていったのを見つけた。
そこには、『兄』と書かれていた。
まるで借り物競争のメモみたいだなと思った。

ふと、自分のポケットにも、いつの間にか何か紙切れが入っていた。
広げると、『父』という文字が書いてあった。

そして、向かいから、知らない誰かがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
俺は自然と、こう話しかけていた。

「もしかして、俺の父さん!!父さんではないですか?!」

ああ。はい、父ですと返事をしてくれる人は現れるだろうか。
俺はいつゴールできることだろうか。



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2013/1/29

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