『パラダイム』


あなたが助けにきてくれるとは思っていなかった。
だけど、もう手遅れなんですよ。

血の色に染まる視界の中で、私はあなたの姿を見つけて、不思議と安らかな心地だった。命の灯は消えようとする寸前だったのだけど。
あなたは私の体を貫いている刃を目の当たりにして絶望することでしょう。
どうか嘆かないでください。私が死ぬことは、シナリオの一部だったのですから。
あなたは憤るでしょう。
私という死に対して、何の意味があったのかと。
あなたという正義に対して、絶望をつきつけることが、私がここで散ることの意味なのです。

夜明けの来ない朝はないように、失ったものを踏み越えて、光を手にいれてくださいな。
そうすれば、私は安心して消えることができます。

人を殺すことが正義なのだと、あなたが悲しんでくれるのを、楽しみに、してます。


そして私は、薄れゆく意識の中目を閉じた。





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2013/2/1

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