『三人の修道女は証言した』




シスターその1は証言した。
ええ、私は確かに見ましたわ。礼拝堂には、男の死体が倒れていたのです。
修道女しか入ることのできない神聖なこの場所に、何故男の死体が? そして何故彼は死んでいたのでしょうか?
私には知る術もありません。
死人のどす黒い顔と、血の匂いに、目の前が真っ暗になってしまって、意識が遠のき、それからのことは何も覚えておりません。

シスターその2は証言した。
私は何も存じ上げません。ただ、礼拝堂の掃除に向かっていただけなのです。
朝日がようやく昇ったばかりの早朝で、私以外にはまだ誰も来ていないだろうと思われました。
が、確かに私は見たのです。礼拝堂から、逃げるように立ち去っていく人影を。
修道女の姿をしていましたが、顔は見ていません。
そして中に入ると、気を失った修道女、ええ、このシスターです。彼女が倒れていたのです。
それ以外は何もわかりません。立ち去った修道女の姿は、あれは何だったのでしょう。私は亡霊でも見たのでしょうか。

シスターその3は証言した。
確かに二人の言う通りかと思いますが、それならば、男の死体が倒れていたというのははたして本当のことでしょうか。
私が駆けつけたときにはそんなものはどこにもなかったのです。


え、私達三人ですか。三つ子ですけど、それが何か関係ありますか?

なんにせよわかりません。






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2013/2/6

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