『紅蓮の死者』



蝋燭の炎が揺れる。まるで象徴的なオブジェのようだ。

「はっ・・・はは、はははッ」

鎖に繋がれた罪人は、引き攣った哂い声を上げた。

「この冥界の底に永劫に捕らわれているか、あるいは、冥界の番人を司る悪魔となって生まれ変わるか」

この目に映るのは、紅い、炎、炎、炎。
漆黒の帳。ひび割れた骨。

「俺の魂を、悪魔に換えるだって・・・? ずいぶんと面白い話じゃないか」

頬のこけた男は、足元に散らばる白い破片を踏みしめる。
目の前に揺らぐのは、紅蓮の炎。鬼火のごとく立ち上る炎は、人間の形に揺れて、男の前に存在する。
そして、男に囁くのだ。
この冥界を支配する者になりたくはないか、と。

血のように紅い炎。これこそが冥界の悪魔の姿か。
男は狂気に魅入られる心地で唇を歪めた。
記憶の中にあるのは、死刑台に上るときの光景。
自分が消えてもこの世界は何も変わらず廻り続けるのだろう。そんなことを思っては、掻き毟られるような虚しさを痛感していた。

いっそのこと、この世の全てをかき回してみたい。
男は吼えるように哂う。









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2013/2/13
15分未完 484字

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