『吸血鬼、適齢期。』



今宵も月は丸い。

「ねぇ、ちょっと肌荒れがひどいと思わない? どうしたらいいのかしら。月明かりにも紫外線って含まれるとおもう?」
「理論上は考えられるでしょうね。月は太陽の光を反射しているのですから。だけど不思議なことに、月明かりで死んだという吸血鬼の話は聞いたことがありません。ご安心して美肌クリームでも塗ってたらどうですか」

色白の美女の傍らに、角の生えた猫と、銀色の翼の蝙蝠が侍る。
透けるような白い肌に、長い黒髪、紅い唇。
はたから見ればさぞかし美しいことだろう。
ただし、彼女に賛美を言ってくれるのは、下等なゾンビくらいなもので寂しいことだ。

「そうよね、夜更かしはお肌に悪いから、早く寝ないとね」
「ええそうですね、昼夜逆転の貴女に、夜更かしも何もあったもんじゃないですけどね。だいたい何故お肌のことなんか気にするんです、主さま。貴女は吸血鬼、不老不死の美貌を持つ、闇の世界の女王様ですよ」
「あたしもそろそろ婚活しようかなぁって・・・・・・」
「なんでまたそんな俗っぽいことを」

「旦那がいたら、わざわざ食事用に他の男探さなくても血がもらえるじゃない。あたしが昼間寝てる間に働いてもらえるし」


ああ、世の中は平和だ。 いいことなのか悪いことなのか。









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2013/2/18
15分 513字


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