『赤い空、赤い砂』




赤い空が一面に広がっていた。
ルビーを溶かして、薄く引き伸ばしたような色の天空。

僕のあとについて歩いてくる少女が、恐る恐る、その空の色を眺めながら、周囲に目を配っている。

奇妙な空だと、思うかい?
そう問いかけようとして、言葉を飲み込んだ。

聞くまでもないことだ。
僕は苦笑して、歩き続ける。

見せたいものがあるんだ。
僕は足元の砂をすくい上げた。
さらさらと、彼女の目の前でこぼしてみせる。
丸い瞳を、さらに一層大きく見開いていた。

「赤い砂・・・・・・?」

不思議そうに呟いていた。
正解。
砂鉄の代わりに、この地の砂には、珠紅石という鉱石の粒が含まれている。

「昔はね、この赤い鉱石の粒で、刀を作っていたそうだよ。鉄を溶かして、焼けた鉄を打って刃を作るのと同じようにね。
だが今では、もうその技術を持った職人はいないと言われていた」

赤い砂がこぼれる。
このままではこの街は、錆びた赤い石に埋れて、血の色の空が晴れることはないだろう。


・・・・・・ここに帰ってくるつもるはなかったのに。


「僕を除いてはね」


この石で、世界を曇らせる暗雲を晴らす刀を作ろう。
そのために僕は戻ってきた。







-----------------------------------------------------
2013/3/1
15分 513字 未完


inserted by FC2 system