『幻の鏡蜥蜴の行方 』



「ありえない!そんなことはありえないんだ!」

大声で叫んで、勢い任せに拳を机に叩きつける。積み上げられた文献が、雪崩のように床に崩れ落ちた。

「しかし紛れもなく事実です。絶滅したはずの銀蜥蜴が、南の辺境にて発見されたのです」
「あの生き物はもう地球上には存在しない、5年前の私の論文で、そう発表したんだ」
「ですから、その定説が覆されたのです。何も気を落とすことではありますまい、我々生物学者にとっては、喜ばしい発見では…」
「だからそれがありえないんだ!どうしてこの世界に存在しないものが、新たに発見されるというんだ!」

磨かれた鏡のような鱗に全身を覆われた銀蜥蜴。生息区域の減少と、観賞用として求める密猟者の乱獲によって、今では地球上には一匹も存在しないと言われていた。
その姿の美しさから、幻の竜、歩く剣、宝石蜥蜴とも言われていた。
考えられるとしたら、まさか、遺伝子操作によって、滅びたはずの生物が生み出されたのか。
命を操る大罪と言われているが。






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2013/4/26
15分 428字 





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