『泣き止まぬ氷雨祓い』 ※未完

お題:大きな時雨 制限時間:15分 文字数:432字

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音の無い雨が降り続いていた。
「どうして、道に迷っちゃったんでしょうねぇ・・・・」
木枯らしの吹く日は、恋人を探して彷徨う幽霊が出るらしい。
「道に迷わせることで、憂さを晴らしているのです?」
にこりと微笑んで、誰もいない虚空に囁きかけた。
自分は陰陽師だ。
目に見えない者の気配を、おぼろげながらも感じ取ることができる。
「悔いていらっしゃるのでしょう?」
冷たい雨が、水干に、袴に染み込んで肌に滴る。
まるで、泣きながら肌を寄せてくる手弱女のごとく。
・・・・・・泣いて、いるのでしょう?
「私も一緒に探してあげますよ」
雨に溶けて流れて。そんな叶わぬ恋ならば。
私がその声を聞き届けて、弔って差し上げましょう。
「だから、ここは私を離してはくれませんか」
私の背後には、雨に濡れて佇む小さな童子がいた。
白い髪と白い着物。
じっと、私の裾を掴んだまま、うつむいている。
そんなにも恨めしい顔をして。
誰を待ち続けていたのでしょうか。
雨は、止まないのですか?



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