『ゼンマイ仕掛けの紅い遺言 』
お題:怪しい血液 制限時間:15分 文字数:558字

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ナイフからしたたりおちる紅い血の色。
なんて美しい光景なのでしょうね。

「機械人形が血を流すなんて、ありえないでしょう」

それは誤解というものです。
このとおり、私のようなゼンマイ仕掛けの人形であっても、人と同じように泣いたり笑ったりするのです。
理不尽に傷つけられると、痛いし、苦しい。悲しい。
それと同じだけ、私を大切にしてくださる相手には、愛おしさと慈しみを感じるのです。

「もっと、生きたかったな……」

錆びたオイルは、赤黒く濁り、鉄を含んだ匂いがした。
ひび割れた身体からしたたり落ちて、あなたの姿を紅い海に浸していく。

「ねぇ、もし生まれ変わって、今度は機械人形ではなく、温かい血が通った本物の人間になりたいなら。
人のことを傷つけるのはもうおやめなさい」

あなたはもうすでに、傷つく痛みを十分に知ったはずなのだから。
壊れても、また治せると思う?
そうはいかないんだよ。
なぜなら、あなたを助けてくれるはずの人を、あなた自身が、殺めてしまったのだから。

「赤い、なぁ……。これが私の血の色なのかぁ……。ふふ、ふふふ……。赤い、綺麗、だ、なぁ……」

壊れかけた身体が震えている。
かすれた笑い声をたてながら。


「私、生きていた、って、言えるのかなあ……」

コトリ。
歯車の絶えたおと




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