『金銀たぬき』

お題:鈍い狸 必須要素:ハッピーエンド 制限時間:15分 文字数:354字

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俺は人よんで、昔話ハンター。
日本の古き良き語り話を収集している。
例えば、小さな石の地蔵とか、鼠が拾ったおにぎりとか、柿の種とか。
錦を織る鶴の羽とか、火打石とか。

「ないなあ……宝箱」
「そうそう簡単に見つからないだろ、千両箱なんて。だからこうして探してるんだし」

相方の狸が、しれっとそんな憎まれ口を叩く。このやろう、可愛くないやつ。泥の舟に乗って沈んでしまえ。

さがしているのは、貴重なお宝だ。
たとえば、長者が拾った藁とか。おっとそれは違うか。
鬼ヶ島から持ち帰った金銀財宝、深海の玉手箱、打ち出の小槌。

「俺のやけどに薬ぬってくれよ」
「はいはい」

道案内をしてくれるといった狸だが、いつまでたってもこんな調子だ。
ただかまってほしいだけの狸かもしない。
狸の恩返しなんて期待しない。





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