『蒼い流刑地』



過去は忘れることにした。
そう思って、私は手紙を破り捨てた。

明日、私は故郷へ帰ります。
私の故郷がどこかって?
そうだね、だいたい7,8万光年くらい離れた、ぎりぎり銀河系の外側くらいの、碧色をした惑星だよ。あなたが暮らしているこの世界と、きっと良く似ていると思うの。

「そんなの嘘に決まってる」

あなたは泣き出しそうな顔をして、必死で首を横に振ったけども。
とりあえず、私は肯定も否定もしないで、ただ微笑んでいますよ。
地球に来れば、不老不死の薬が見つかると聞いたのだけど。
やっぱりそんなもの、ありはしないのだね。
ええ、そうなんですよ。
どんなに技術が発展しても、空を翔けて、星の海を越えて旅をすることが出来るようになっても。
命の期限だけは延ばせないものなんですね。
100億年輝き続ける紅い星だって、いつかは燃え尽きるときがくるんです。

「今度また会えたら、一緒に、蒼い海が見たいですね」

ゆらゆらとたゆたう蒼い色。
きっと綺麗でしょうね。

え、今、捨てた手紙のことですか?
ふふ。これはね、もう二度と帰って来るなという宣告ですよ。
本当は私はもう帰る場所はないんですけどね。

でも、この世界に生きる人間はとても生命力が強いんですね。
どんなに酷い罪を犯しても生きることを投げ出さないし、いつか赦される日も来る。そんな信仰があるらしい。
どんなに哀しくても、いつか忘れて生きていけるんですね。

私はきっと、この蒼い星で、絶望を見つけるためにきたんですね。この地は私にとっての流刑地です。
でも、生きるってきっと、綺麗なことなんですね。
心の綺麗な人は、あなたのように綺麗な瞳をしている。
そんな生き方ができたらいいな。

ありがとう。あなたに会えてよかった。







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2013/1/19

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