『White Fate』




唐突に、毎日の気候が急変してしまった。
地上は雪と氷に閉ざされて、人々は地中の奥深くで暮らすようになった。

「私は・・・知っていましたけどね。そろそろこういう時代が来るって」

魔術師は、タロットカードをめくりながら、そう零していた。
マイブリオ皇国は、緑が豊かな、温暖な気候に恵まれていた土地だったのに。
恐らく、この国を侵略しようとしているどこかの国の魔道師が、呪いでもかけているのでしょうと、魔道師は呟いていた。

「12の月がある季節の中で、永遠に冬冬冬、地上は全て白銀の世界、いっそ美しいと思いませんか」
「悠長なこと言ってる場合じゃないですよ、このままじゃこの国は滅亡ですよ」

ぱらりとまたカードをめくる。壊れた搭と死神が並ぶ。

「とはいえ太陽を取り戻すのは容易なことではないですよ」
「僕は、夏になったら、隣の国に移り住んでいた許婚を迎えに行くつもりだったんです」
「ならば行けばいいんじゃないですか。国境に流れる運河が凍っているから、船が無くても歩いて渡れるでしょう」

仮に一歩外に出れば、外は真白い雪が厚く積もっている。暦の上では真夏のはずなのに。

「やっぱり諦めきれない、師匠、雪の中を歩いていける魔法を教えてくれませんか」
「あなた程度の未熟者が、迂闊に彷徨って生き残れますかねぇ」

ぱらりぱらりと、カードをめくり続けている。
冷たい口調に、返す言葉もなく肩を落とした。
が、魔術師の手がこちらへ差し出された。向けているのは一枚のカード。

「気休め程度のお守りですけど持って行きなさい」

ぱっと笑顔になって、魔法のカードを受け取る。

「・・・・絵柄も文字も何も描かれてないですけど?」
「さぁね。そのカードが表す意味は、あなた自身で考えなさい。カードの持つ意味も言葉も魔法も、一通り私が教えたはずですよ。
 それとも、呪文の綴りさえ覚えていませんか」
「いやいや・・・・」

そして、白い雪の魔物が立ちはだかる大地を越える旅に出る。






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2013/1/19

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