私がこの手に触れたものを、黄金に変えて見せます。
 貴女が心を奪われるような、この世のものとは思えないほどの美しい宝飾品を差し出しましょう。

 ダイヤのついた髪飾り。サファイヤをあしらった薔薇の花。肖像画のレリーフを刻んだ白金のブローチ。
 全て貴女の望むままに。
 それとも、こんな玩具では、貴女の心は満たされないのでしょうか。
 
 永遠に枯れることの無い花を貴女に差し上げましょう。






夢を見ていた気がする。
くだらない、昔の。


「マイスター、朝ですよ、もういい加減起きてくださいよう」

 ごそごそと話し合う囁き声が聞こえて、深いまどろみの底に沈んでいた思考が、現実へと引き戻されえる。
 聞こえてくるのは、若い少年と少女の声。普段からよく聞き馴染んでいる助手らの声だ。

「おはようございます、マイスター」
青いドレスの少女が、私の傍らで一礼する。
「おはやくもないですけど、マイスター、今日は一応、朝と呼べる時間のうちに起きてくれてなにより」
赤い服を来た少年が、おどけたような口調でそう言ってお辞儀をする。
「・・・・・・シアン、カーマイン、相変わらず朝から賑やかだな。お前達は」

マイスターと呼ばれた男は、気だるげに呻いて、ゆっくりと身を起こした。ベッド代わりにしていたソファの上だ。よれよれになった毛布が、膝下で丸められている。

「コーヒーは飲みますか」
「いつものだ。砂糖は入れなくていい」
「またあの、濃すぎるコーヒーですかぁ? 苦すぎるでしょう、あれ。毒を飲んでるようなもんですよ」
「コーヒーは苦ければ苦いほどいい」
「はいはい。カフェイン致死量超えても知りませんから」







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