【 broken beat - other - 4 】









静寂のグラス
傾ければ滴る赤い雫

よりそえば引き裂く痛み
終わりの無い蜃気楼



冷えた体を起こす
悪い夢でも見ていた気分だ
壊れたかガラクタのように投げ出した体


夢は 覚めない



二日酔いのような心地
この体に滞る毒






「・・・・・・ちくしょう」





触れていた感触を思い出す。
確かに手に触れていたような気がしたのに。
実際、一夜明かして手に残ったのは、苦痛ばかりだ。
あるいは、贖罪。
自らを手折るものを、あえて拒まない、白い花。


求めても、拒まない。
あの女は、逃げることを知らない。強すぎるからだ。
それが義務のように思っている。
自分を責め続けて生きている。




 カツン   カツン   カツン




階段を下りる。



軋む扉を静かに開いた、その向こうには。





「・・・・・・・あぁ、奇遇だな。また会ってしまったか」




琥珀色のグラスを傾けている、”魔法使い”がそこにいた。
カウンターの椅子の一つに、わだかまる陰のような、黒衣の姿。


奇妙だ。こいつの存在感には、人間の熱を感じない。




「どうしたんだ。酷い顔してるな。腹でも壊したか」




ああ。
文字通り、覚めない悪夢そのものだ。




「魔法使い・・・・・・、お前らは何のためにここへ来たんだ」




今日はケンカを売るほどの気力は無かった。
ただ、こいつの正体が気になっていた。



「地上は見てきたか?」





すさんだ街 廃墟 よどんだ空
灰色の空気 ・・・・・・

何があって
この世界は崩れてしまったのだ





地下へと降りた入口を覚えているか?
路地裏に隠された道から。螺旋階段を降りて降りて、奥へ続く道を探した。

あれは、迷い込ませるためにある。
狂った人間はたどりつけない。
蝶に惑わされた人間を、地上に隔離するための階段だ。




いつからアズラエルはこの街に舞い降りたんだ
黒い羽の蝶 死を告げる天使

天使なんかこの世界にはいやしない
汚れた風を厭(いや)がって 俺達を見捨てて消えた

歌声なんか聴こえない
響くのは哀しみの鳴き声ばかり





「なぁ、魔法使い・・・・・・、なぜリズが、アズラエルという薬に、ああまでこだわるか知っているか」




無口なままでアルコールのグラスを傾けていた男が、じっと目線だけこちらに向け、俺の言葉を聴いている。
音を操るという魔法使い。



この虚空にどんな音を奏でるか。



俺はいつの間にか、何でもあきらめる癖がついてしまったようだ。
本当は、戦っているふりを続けているだけだ。




なぁ。


あいつを、止めてやってくれないか。








「あの薬を、最初に作り出したのは、リズ自身だからだよ」









壊れて、砕け散ってしまう前に。










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(2011/12/18)
だいたい2009年にノートに書きなぐってたのそのままですね。





















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