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水色の空が澄み渡っていて、とても清々しい朝だった。

「・・・・・・お前さんがポトゥンを盗んでたところを見たって言ってるんだ、正直に言ったらどうなんだ」

まぁ、いきなりこんな、全く身に覚えのないことで怒鳴られる羽目にさえならなければ、本当に心地良い朝だったんだと思うよ。
頭に白いものが混じった、やや初老のおじさんが、ため息をつきながらあたしのことを冷やかな目で見ている。

「えと・・・・・・すみません、あたし本当に何もしてないですよ」
「だめだよーやっちゃいけないことといいことのけじめぐらいちゃんと持たなきゃ。お前さん、ロカさんところで預かってる子だろ? 
 こんなことしちゃいかんよー。ご飯はちゃんと食べさせてもらってるんだろう?」

だめだ。全然聞いてもらえないわ。

「あはは、しゃーないしゃーない、チア、キチパスの親父さんにはあたしからどうにか言っておくから、気にしないで朝ごはんでも食べておいで。
 無くなった分のポトゥン弁償分くらい今日は頑張ってもらうからね」

ロカさんが朗らかな笑い声を立てながら、テーブルに朝食を並べている。
ベーコンエッグにサラダに、瑞々しいフルーツもある。おいしそうな匂いに思わず頬が緩む。
って。そんな呑気に朝ごはん食べてる場合じゃないってば。あたし、悪い子だって誤解されちゃってるじゃないの。
泣きそうになりながら必死でロカさんへ訴える。

「ロカさんお願い信じてよぉぉぉ、あたし何もしてません、本当ですよ、無断でお店のものを持ってきたり、ましてや盗んだりなんてあたし、絶対に」
「わかってるわかってるよ。チアはうっかりさんだね。なははは」
「そうじゃなくて、あたし本当に盗んだりなんて」
「はいはい、チア、一応忠告しておくけどね、狐エルフに会うときは、うっかり髪の毛を盗まれないようにしなきゃだめだよ。あいつらは思いのほかいたずら好きだからねぇ」
「だから本当に、あたし、うっかりなんて・・・・・・・んん?」

ロカさんの言葉に一瞬、何を言われたのか混乱して思考が停止する。

「あ、そうそう。そういえばこれ、サーナから預かってるよ。チアに伝えてって言われてたねぇ」

そして差し出されたのは、小さく折りたたまれた手紙だった。
手紙というほどのものでもない、書置きかメモみたいなものだけど。

「あの子はあの子で、朝からどこへ行ってるんだろうねぇ。まぁ、サーナはいつも毎日よく働いてくれるから、たまには息抜きしてくれてたほうがあたしもほっとするんだけどねぇ」

折りたたんだ紙切れを開くと、サーナの丁寧な文字で、こう書かれていた。

『チア、昨日はどうもありがとう。
 もう少しだけ、手伝ってほしいことがあるの。
 お話ししたいことがあるから、リリープの街の北東にある、噴水広場の前まで来てください。
 町長のところへ相談しに行きたいと思います』


おお? おおおおお?






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